温故知新 - fx-9860G

プログラム電卓 温故知新
 - 搭載プログラミング言語に注目して、プログラム電卓の変遷を考える - 
<目次>


 
2020/01/04
追記 2020/01/07

過去から現在に至る性能や仕様の変化を調べ、プログラミング言語を中心にカシオ製プログラム電卓の系譜を明らかにする。

6. 新世代 Casio Basic の登場 - プログラム機能の大幅な向上

今回は、CFX-9850GC PLUS の後継機として海外で2005年発売の fx-9860G を取り上げる。国内では、fx-5800P が先に発売され(2006年9月)、その後に fx-9860G が発売されている (2006年10月以降)。国内と海外で発売時期が異なるのは珍しいことではない。
2006年9月発行のカシオ電卓総合カタログ
2007年12月発行のカシオ電卓総合カタログ

カシオ機に搭載されたプログラム言語に初めて GetkeyLocate が追加され、画面スクロール無しで入出力ができるようになったのが CFX-9850G であった。これに関数やコマンド類が追加され、このシリーズ最終モデルが CFX-9850GC PLUS であったが、プログラミング言語としては色々な癖があり、使い易いとは言えなかった。

CFX-9850GC PLUS の後継機種として、その言語仕様ならびにエディタ画面が大幅に改善された fx-9860G が今回取り上げるモデルで、これには 新世代Casio Basic と言うべき言語が搭載されていた。

[2020/01/07 追記]
2005年に発売されてから、fx-9860G の基本設計はそのまま新機種 (例えば、2020年での fx-CG50) に引き継がれてているのは、このモデルの設計がどれだけ野心的であったか、そしてその完成度の高さを示している。


Casio fx-9860G

fx-9860G_Calc
fx-9860G が、欧米で2005年に発売され、国内では 2006年10月以降(おそらく2007年?)に発売された。

カタログ 取扱説明書 (e-Gadgetサイト) 

CPUは、日立製SH3のカスタムチップ SH7705を使っている。

メインメモリは 63KBで、Casio Basicを含めたOSが格納されている。

fx-9860G
の最大の特徴の1つはアドインプログラムが使えるようになったことで、1.5MBもの(当時としては広大な)ストレージメモリ(保存メモリ)を備えており、アドインプログラムを保存し走らせることが出来る。なお、アドインプログラム作成用のSDKも公開された。SDKの入手

なお、オーストラリア版の fx-9860G AU は、理由が不明だがストレージメモリが 0.8MB と少ない。

液晶周りの光沢コーティングや筐体裏側のつや消し黒塗装は高級感を演出していて、個人的には好きなデザインだ。

OSの変遷
2005年の発売当初のOSバージョンは 1.02、その後 1.03、1.04、1.05 とアップデートファイルが提供された。
2009年に fx-9860GII (SH3, OS2.00) が発売されると、機能を近づけた(実は完全に同じにならなかった) fx-9860G 用の OS2.00 へのアップデートファイルが公開され、その後 OS2.01 へのアップデートファイルが提供された。

OS 1.02 と 1.03 では Casio Basicの処理速度には大きな違いがなく、一連のバージョンの中で最速であった。OSがアップデートするにつれCasio Basicのデバッグと機能追加が進むが、一方で処理速度は遅くなる傾向は確実にある。実際にベンチマークを行った結果は以下に示す。

電源の変更
1つ前の機種 CFX-9850GC PLUS までは、駆動用電池に加えてバップアップ用電池を使っていた。fx-9860G も初期はバックアップ用のコイン型リチウム電池CR2032を用いていたが、そのうちバックアップ電池を使わずに単四電池4本のみでバックアップ機能を実現するようにマイナーアップデートされた。

fx-9860G_Battery_Case2 
左は コイン型リチウム電池 CR2032 を使うモデル、右は 単四4本のみでバックアップ機能のあるもの。バックアップ電池用の樹脂型が修正され、その跡が見てとれるのが興味深い。この電源周りのバージョンアップは特にアナウンスされないままマイナーバージョンアップされたようだ。

関数電卓としての性能

分数表示と演算精度
235÷658 を計算すると 0.3571428571 と表示される。ここで、[F↔D]キーを押すと 5/14  と表示される。計算精度は内部15桁だ。

複素指数関数
eπi を計算してみる。計算できれば答えは -1 になる。
1つ前の機種 fx-9850GC PLUS では複素指数関数の計算ができず、演算エラー(Ma ERROR) になったが、fx-9860G で初めて複素指数関数の計算に対応した。

一方、e(5/3)πi を計算させると、0.5 - 0.8660254038i と表示され、[F↔D]キーを押すと 1/2 - 0.8660254038i  と表示される (OSバージョンによらない)。なお、次の機種 fx-9860GII 以降は自然数式表示機能が徹底され、これを計算すると 1/2 - √3/2i と表示される。
 

搭載言語 (Casio Basic) の概要

fx-9860G OS1.0x では、CFX-9850GC PLUS の搭載コマンドと同一である。その後 OS2.01 では 次機種の fx-9860GII で追加された文字列処理や細かなコマンドと同じものが追加された。

主なコマンド (OS1.0x) [2020/01/07 修正 ※]
 - 入力:?→, Getkey
 - 出力:" ", , Locate
 - テキスト画面消去:ClrText
 - 無条件ジャンプ:Goto / Lbl
 - 条件ジャンプ: (fx-4000P、7000G と同じ仕様)
 - カウントジャンプ:Isz, Dsz
 - 条件分岐:If / Then / Else / IfEnd
 - For ループ:For / To / Step / Next
 - Do ループ:Do / LpWhile
 - While ループ:While / WhileEnd
 - 制御コマンド:Break, Return, Stop
 - 比較演算: =,, >, <,,
 - 論理演算: And, Or, Not
 - 配列:無し
 - リスト:List (配列としても使える)
 - 行列:Mat (配列としても使える)、行列初期化コマンド
Dim
 - 各種関数

1つ前の機種 CFX-9850GC PLUS の以下の問題は解消されている;
 - Then / Else 直後の改行:Syn ERROR になる
 - 行頭での改行 (空白行):Sys ERROR になる

 主なグラフィック コマンド [OS1.0x]
 - グラフ設定:CoordOn/CoordOff, GridOn/GridOff,
        AxesOn/AxesOff, LabelOn/LabelOff
 - 座標系設定:ViewWindow,
        Xmax/Xmin/Xscl/Xfct, XdotYmax/Ymin/Yscl/
Yfct
 - 消去コマンド:ClrGraph, Cls
 - Sketchコマンド:Plot, PlotOn/PlotOff, PlotChg, PxlOn, PxlOff, PxlTest
          Line, F-Line, Vertical, Horizontal, Circle
 - 各種グラフコマンド

但し、Plot, PlotOn, PlotOff, PlotChg, PxlOn, PxlOff, PxlChg, Circle の詳細仕様は、CFX-9850GC PLUS と異なり、これらのコマンドのパラメータに X, Y を使えるが、これらのコマンドを実行すると論理座標系での X と Y の値が 変数 X と Y に自動的に入力される仕様を意識して X と Y を使う必要がある。


プログラムの作成と実行
キーコード取得プログラムを入力した。コマンドを入力するためのキー (キープレス) は、1つ前の CFX-9850GC PLUSfx-9860Gシリーズ、fx-9860GIIシリーズ、最新の fx-CGシリーズと全く同じだ。言語機能の基本仕様は1つ前の機種 (CFX-9850GC PLUS) から固まっていることが分かる

ファイル名:GETKEY
Locate 1,1,"=== Get Keycode ==="
Locate 1,3,"Keycode ="
Locate 10,5,"Hit Any Key"
Locate 13,7,"[AC]:Quit"
While Getkey
WhileEnd
Do
Do:Getkey→K
LpWhile K=0
Locate 9,3,"=   "
(スペース6個)
Locate 11,3,K
LpWhile 1


Keycode 
この画面は、[DEL]キーを押して、キーコード44が表示されているところだ。
なお、fx-9860G では アルファベットの小文字をプログラムで使えるようになった。
fx-9860GIIシリーズや fx-CGシリーズと同様に、テキスト表示の範囲は21桁、7行だ。

プログラムリスト
Program_List 
Program List には、アルファベット順にプログラム名 (ファイル名) が並んでおり、アルファベット順になっていなかった CFX-9850GC PLUS の入力順という仕様よりも大幅に使いやすく改善されている。

プログラムの編集
プログラム編集画面は、挿入モードになっており、使いやすい。

1つ前の CFX-9850GC PLUS まではプログラム編集は上書きモードになっており、極めて使いづらかった。ちなみにスタンダード関数電卓 (fx-991MSなど) も上書きモードになっていた。実は、2005年以降発売のプログラム電卓 (fx-9860G) やスタンダード関数電卓 (fx-991ES) から一斉に上書きモードに変更されている。

おもしろいことに、シャープも40周年記念モデルが発売されたほぼ同じ時期に上書きモードから挿入モードに一斉に切り替えられているようだ。余談だが、ソニー創業者の一人である井深大氏の著書(「ボスニアの夜は更けて」だったかよく覚えていないが...)で、"技術の連通管現象" ということを書かれている。世の中の技術の進歩はどこかで底通していて、そのレベルは同じように上がる、どこかだけのレベルが上がることはない、といった意味のことであり、これが思い出される。
 
パソコンで文章を書く時は、通常は挿入モードで利用しているはずで、上書きモードは必要な時のみ切り替えて使うと思う。fx-9860Gシリーズ以降のプログラム電卓では、プログラム編集画面は常に挿入モードになっていて、必要な時に [SHIFT]-[DELL](INS) と押して上書きモードに切り替えて使う。

以前のプログラム電卓やポケコンでは、区切り文字を使ってプログラムをズラズラと1行に書いていた。fx-9860G において、そのく仕様から完全に決別したと言える。


プログラムの転送
3Pin_USB_Link PCリンク : 3Pin - USB ケーブル利用
3pin-USBケーブル (SB-88) と プログラムリンク ソフトウェア (FA-124) を使えばPCリンクや電卓の画面取得が可能になる。
3pin-USBケーブル (SB-88)
現在は製造中止品だが、takumako様により互換ケーブルが有償頒布されているので私はこれを利用した。
プログラムリンク ソフトウェア (FA-124)
カシオのサイトから無償ダウンロードできる。

 電卓間転送
3pin-3pinケーブル (SB-62) を使えば、3pin端子のあるグラフ関数電卓とプログラムの転送ができる。
3pin-3pinケーブル (SB-62)
まだ販売されているが、takumako様により互換ケーブルが有償頒布されている。SB-62 は fx-9860Gシリーズや fx-CGシリーズの国内正規版には標準添付されている。

USB_USB_Link PCリンク:USB (mini) - USA (A) ケーブル利用 
fx-9860G に同梱される USB(mini)-USB(A)ケーブルを用いると、3Pin-USBケーブル利用よりも高速に転送可能だ。プログラムリンクソフトウェア (FA-124) を使えばPCリンクや電卓の画面取得が可能になる。


ところで、PCへ転送されるファイルは g1m ファイル (拡張子 g1m) だ。










テキストベース・プログラム
モグラ叩きゲーム
以前 fx-9860GII で作ったアクションゲーム - "Whack-a-Mole (もぐら叩き)" を転送した。fx-9860G の OS2.0 以上なら完全互換で動作した。ここで転送したプログラムファイルは、WHACKAMOWAMINPI の3つだ。

WAM_1 WAM_2 

fx-9860G OS1.02OS1.05 では、RanInt#( 関数が備わっていないので、RanInt#( の代わりに Int(Ran#( を使って同等に動作するように変更する必要があった。OS2.0 以上にアップデートすれば、RanInt#( 関数が追加さるので、fx-9860GII と完全互換で動作するようになる。


fx-9860G でのプログラミング

1つ前の CFX-9850GC PLUS からの改善点
CFX-9850GC PLUS のプログラミング言語 Casio Basic は数々の問題が残っていたが、fx-9860G で殆ど改善された。以下に個別の項目を列挙する。

空行 (改行のみの行) はSyn ERROR になる
 この問題は改善された。これは、昔の1行プログラミングの時代の影響が解消された。

Then / Else の直後を改行すると Syn ERROR になる
 この問題は改善された。上の空行禁止の問題の解消と併せて、If ステートメントの可読性が大いに向上した。

ループ (While / Do) の2重構造で、内側のループと If の入れ子構造が共存すると IfEnd のところで Syn ERROR になる
 この問題は改善された。このエラーは、While / DoIf の構造制御のスタック管理に失敗しているバグと考えられ、構造制御ステートメント While / Do を追加した直後に潜り込んだバグだったと思われる。 

出力 "" で内部カーソルが改行されない
 この問題は改善された。

行末に区切り文字 : があると Syn ERROR になる
 この問題は改善された。

出力文字列に : を含む行を ' でコメントアウトすると Syn ERRORになる
 ※対策:機切り文字 : の直後に ' を付加する
この問題は、fx-9860Gだけでなく、fx-9860GII や fx-CGシリーズにも残っており、カシオは操作マニュアルを修正して対応している。詳しくは 楽屋裏 - Casio Basic コメントアウト '  のバグ を参照

出力命令 " " では1文字ごとに出力する
"Strings" を実行するとタイプライターのように、左から1文字づつ出力されることは無くなった

fx-9860G OS1.0x では実装されていない関数やコマンドでの Syn ERROR
例えば、Whack-a-Mole (モグラ叩きゲーム) で使っている、RanInt#( は OS2.00 以降にはあるが、OS1.0x には無い。そこで、以下のようにすれば対抗可能だ。 
- RanInt#(1,9)Int(90Ran#÷10)+1 に変更
- RanInt#(1,3)Int(30Ran#÷10)+1 に変更
- RanInt#(0,9)Int(10Ran#) に変更

Do / While / For ループからの脱出に Dsz / Isz を使うと Syn ERROR になる
 ※対策:ループを Lbl / Goto に置き換えるか、ループ脱出に Break を使う
この現象は、fx-5800Pfx-9860G 以降のグラフ関数電卓でも存在することが確認されている。
⇒ 楽屋裏 - Dsz によるループ脱出 参照
カシオお客様サポートのご担当者とのやりとりの結果、ループの後 (必ずしも直後でなくても良い) に Goto 0:Lbl 0 と記述することでこのエラーを回避できることが分かっている (詳細は上記記事参照)。


処理速度の比較

四則演算および関数計算

加算プログラム
加算 

プログラムを起動し、N に 1000 を入力して実行時間を計る。

fx-9860G のプログラム
fx7000G_source_adding_up_Isz2 AddTest_For 
繰り返しに Goto / Lbl を使うケース(左)と For を使うケース(右)の2通りで処理速度を調べる。


数値積分プログラム
関数 

この通史積分は、とね日記 - 席初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO FX-502P (1979), FX602P (1981) で取り上げられているものをそのまま使わせていただく。

プログラム起動し、分割数として 1000 を入力して、時効時間を計る。

fx-9860GS のプログラム
FuncTest_Goto_9850 FuncTest_For_985 
クリア絵師に Goto / Lbl を使うケース(左)と For を使うケース(右)の2通りで処理速度を調べる。

以前調べた結果と併せて、上記の計算速度のを比較結果を示す [2019/07/31 修正]
加算プログラム数値積分プログラム
機種実行時間比較実行時間 (秒)比較
FX-502P123.1 秒---1261.8 秒---
FX-602P111.2 秒1.1 倍716.5 秒1.8 倍
FX-603P37.8 秒3.3 倍166.2 秒7.6 倍
fx-4000P61.7 秒2.0 倍349.1秒3.6 倍
fx-4500P195.0 秒0.6 倍798.1 秒1.6 倍

fx-4800P
A=A+126.3 秒4.7 倍114.3 秒11.0 倍
Isz A21.2. 秒5.8 倍109.4 秒 11.5 倍
fx-7000GA=A+120.7 秒5.9 倍146.1 秒8.6 倍
Isz A19.3 秒6.4 倍143.2 秒8.8 倍
CFX-9850GGoto20.9 秒5.9 倍98.3 秒12.8  倍
For9.2 秒13.4 倍84.3 秒15.0 倍
CFX-9850GC PLUSGoto22.0 秒5.6 倍100 秒12.6 倍
For9.2 秒13.4 倍85.4 秒14.8 倍






fx-9860G

OS 1.02
Goto2.1 秒61.6 倍14.6 秒86.4 倍
For1.3 秒94.7倍13.2 秒95.6 倍
OS 1.03Goto2.1 秒61.6 倍14.4 秒87.6 倍
For1.1 秒111.9 倍13.1 秒96.3 倍
OS 1.04Goto2.5 秒61.6 倍14.3 秒88.2 倍
For1.2 秒102.6 倍13.0 秒97.1 倍
OS 1.05Goto2.3 秒61.6 倍14.3 秒88.2 倍
For1.2 秒102.6 倍13.1 秒96.3 倍
OS 2.01Goto3.6 秒34.2 倍17.0 秒74.2 倍
For2.5 秒49.2 倍15.1 秒83.6 倍
記念すべき FX-502P を基準に、速度が何倍になっているかも併せて示している。

加算処理、数値積分(関数処理) は格段に高速化し、FX-502P の 100倍程度だ。Goto / Lbl ループより For の方が倍近く速い。
OSのバージョンにより、処理速度の差が顕著に表れている。OS 1.03 と OS 1.04 が最も高速だ。
次機種 fx-9860GII の登場に併せてがOS 2.01 へのアップデートファイルが提供され、使える関数が増強された。但し処理速度は遅くなった。


グラフィックス描画
▶ ドット描画プログラム

fx-7000G のグラフィック画面が 95 x 63 ドットなので、それに合わせて fx-9860G でも 95 x 63 ドットを塗りつぶして処理速度を比較する。

fx-7000G のプログラム
fx7000G_Dot DOT_fx7000G  

fx-9860G のプログラム
Dot_Plot Dot_Pxl 
Plot を使うケース(左)と PxlOn を使うケースの2通りで処理速度を調べる。

PlotPxlOn
fx-7000G213 秒
CFX-9850G926.5 秒0.23 倍496.0 秒0.43 倍
CFX-9850GC PLUS901.1 秒0.24 倍929.1 秒0.23 倍
fx-9860GOS 1.02251.2 秒0.85 倍255.7 秒0.83 倍
OS 1.03251.7 秒0.84 倍256.6 秒0.83 倍
OS 1.04252.8 秒0.84 倍257.5 秒0.83 倍
OS 1.05251.9 秒0.85 倍256.7 秒0.83 倍
OS 2.01295.8 秒0.72 倍301.7 秒0.71 倍

fx-9860G では、CFX-9850GC PLUS よりも3倍程度高速化している。
また1つ前の CFX-9850GC PLUS では、PxlOn によるドット描画は Plot の2倍程度の処理時間であったが、fx-9860G では PxlOnPlot は同等レベル、PxlOn が僅かに高速であった。

但し、fx-7000G よりは依然遅い。加算処理や関数処理は大幅に高速化しているのに、ドット描画が大変遅い理由として画面更新が大変遅いことが挙げられる。


画面更新プログラム
上で、画面へのデータ転送が処理速度のボトルネックになることが分かったので、頻繁に画面更新するプログラムを実行して、その処理速度を調べて比較することにする。

ところで Getkey コマンドが返すキーコードは、テンキーや[EXE]キーだけでなく、[AC]を除く全てのキーに対応しており、Locate コマンドで任意の位置への出力が可能なので、プログラムの自由度が大きく、画面がスクロールしないプログラムを書ける。そして画面がスクロールしないプログラムでは、画面更新速度は重要な評価ポイントになる。これが適用できるのは、CFX-9850G, CFX-9850GC PLUS そして fx-9860G なので、これらのデータを比較する。

出力画面は、テキスト画面とグラフィックス画面 (グラフ画面) の2つがあり、これらは同時に表示できない。そこでテキスト画面の高速更新プログラムとグラフィックス画面の高速更新プログラムを作成して評価に利用することにする。

グラフィックス画面更新プログラム - モンテカルロ法にょる円周率計算 - MONTECAR
Moneca_fx-9860G 
プログラムのダウンロード - Montecar.g1m を電卓に転送する
プログラムの詳細はこちら
ランダムに500回点を打って出力するまでの時間を調べる。

テキスト画面更新プログラム - ピタゴラス数の計算 - PYTHA
Pytha_fx9860G 
プログラムのダウンロード - PYTHA.g1m を電卓に転送する
プログラムの詳細はこちら
ピタゴラス数500個を計算して結果を出力するまでの時間を調べる。

MONTECARPYTHA
CFX-9850G294.3 秒165.6 秒
CFX-9850GC PLUS295.2 秒0.99 倍267.7 秒0.62 倍
fx-9860GOS 1.0276.0 秒3.87 倍115.4 秒1.44 倍
OS 1.0389.3 秒3.30 倍115.8 秒1.43 倍
OS 1.0489.4 秒3.30 倍115.8 秒1.43 倍
OS 1.0589.2 秒3.30 倍115.9 秒1.43 倍
OS 2.0195.8 秒3.07 倍128.7 秒1.29 倍

GetkeyLocate を最初に搭載した CFX-9860G を基準に、処理速度の比率も合わせて示した。

MONTECAR はグラフィック画面にドットを繰り返し描画する。fx-9860G での処理速度向上は3倍以上になった。PYTHA はテキスト画面に文字を繰り返し出力する。fx-9860G での処理速度は 1.3~1.4倍程度となった。これらの比較から、fx-9860G ではテキスト出力は多少速くなり、グラフィックス出力が大きく向上したと言える。

fx-9860G のOS が 1.0x から 2.01 にアップデートされると、明らかに画面出力が遅くなったことも併せて分かる。


プログラム電卓の系譜 

単なる計算やグラフ表示のマクロ言語から脱却し、アプリケーションとしてのプログラムを書けるように進化した Casio Basic を搭載したのが fx-9860G だ。カシオのプログラム電卓の中で極めて大きな進化を遂げたモデルであり、現行モデルの基本設計がこのモデルで固まった。

fx-9860G は、カシオのプログラム電卓で初めてアドインプログラムを走らせることができ、それを開発するための公式SDKを提供した野心的なモデルでもある。

プログラム編集モードにおいて 挿入モードがデフォルトになった点も高く評価できる。2005年発売の fx-9860G だけでなく、この年以降に発売されるプログラム電卓と関数電卓の全てがデフォルトで挿入モードに変更されているのは、カシオ電卓事業における大きな判断があったと思われる。

2005年発売の fx-9860G のハードウェア仕様、関数やコマンド類全てにおける基本設計は、2020年現在の fx-CG50 にまで引き継がれている。

fx-9860G は、新たにUSBポートを備え、PCとUSBケーブルでリンクできるようになり、従来の 3Pin - USB接続よりも高速なデータ転送が可能になった。SDカードをストレージとして使える fx-9860G SD が同時発売されたことから、データ保存とデータリンクに新たな機能を提供するモデルとなった。

さらに 2007年発売の fx-9860G Slim も重要なモデルで、クラムシェル(2つ折り)タイプで小型化しつつ液晶画面の大型化が実現した。ハンドヘルド電卓として世界初のバックライト機能も追加された。(fx-9860G Slim については別途まとめている)

fx-9860G シリーズは、ハードウェアとソフトエアの基本設計は、その後のグラフ関数電卓に色濃く引き継がれている。カシオの電卓開発史上、最大のマイルストーンと言って良いと思う。

fx-9860G シリーズに搭載されている Casio Basic は、fx-4000Pfx-7000G の上位互換の仕様を有しており、Casio basic の系譜は fx-9860G に引き継がれ、大きく改善され、ようやくマクロ処理ではない実用的なアプリ開発が可能な言語に仕上がった集大成が fx-9860G である。

fx-9860G の Casio Basic は、fx-5800P に移植され、さらに改善されることになる。



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温故知新:番外編 - 関数電卓としての使い勝手



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keywords: プログラム関数電卓、プログラミング、Casio Basic、CFX-9850GC PLUS

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ジャンル : コンピュータ

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Re^3: fx-9860GIII

管理人様、iron2様、皆様、こんにちは!

iron2様、
時間表示が上手くいったようで良かったです。(^^)

>fx-5800pの純正カシオベーシクとfx-5800pのハードでの速度に対して
>c.basicで10倍速、ftune2で更に10倍速の100倍速は少なくともでていそう
です。

関数計算を含む場合、
fx-5800Pから比較するとfx-9860GIIの純正CasioBasicで約10倍、
C.Basicではそこからさらに10~20倍速くらい出るので、
オーバークロックで10倍として、
fx-5800P比では1000倍速以上になりますね。(^^;



管理人様、
>...ということで、以下のエントリーを作りました。
https://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-715.html

お!早速の新エントリーですね。(^^)


>上記のスレッドから、発売時期は9月っぽいですね(新学期という記述があるので..)

昨年のGraph35+EIIの発売時期からすると9月以前に早期発売になる可能性もありそうですね。


>fx-5800Pの後継機種にも関連するかも知れませんね...というかこれそのものが後継機種だというのもありそうですね。

fx-5800Pのプログラム電卓というカテゴリーが下位機種のfx-72Fだけになってしまうのも寂しいので、
fx-5800Pの後継機種の可能性はまだ残っていると信じたいです。(^^;

Re^2: fx-9860GIII

sentaro様、iron2様、皆様、こんにちは!

sentaro様のいち早い情報ありがとうございます。
...ということで、以下のエントリーを作りました。

https://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-715.html

fx-5800Pの後継機種にも関連するかも知れませんね...というかこれそのものが後継機種だというのもありそうですね。

Re: fx-9860GIII

sentaro様、皆様、こんにちは!


> TI-Planetより新機種情報を仕入れてきました。
> https://tiplanet.org/forum/viewtopic.php?f=51&t=23396

Waw,

いよいよですね。
早速、これから新しいエントリーを立ち上げようと思います。

ホットニュースを有り難うございます。

上記のスレッドから、発売時期は9月っぽいですね(新学期という記述があるので..)

re:fx-9860GⅢ

管理人様、sentarou様、、ユーザー有志の皆様
fx-9860GⅢほしいですが、妻に叱られそうなので我慢しておきます。

sentarou様、一旦停止によるリセットだったのですね。うまくはかれました。
ありがとうございました。
時間はたぶん最小表示時間の0.01秒でした。
ノーマルクロックはまだためしてませんが、0.1から0.2秒ほどで計算できそうです
ね。fx-5800pの純正カシオベーシクとfx-5800pのハードでの速度に対して
c.basicで10倍速、ftune2で更に10倍速の100倍速は少なくともでていそう
です。大きなメモリを使わない計算でしたらグラフプログラム電卓で十二分な
能力があると思います。某国産のv30の乗ったパソコンと比べるとはるかに
高速です。

fx-9860GIII

管理人様、皆様、こんにちは!

TI-Planetより新機種情報を仕入れてきました。
https://tiplanet.org/forum/viewtopic.php?f=51&t=23396

fx-CG50の新型ではなかったですが、
fx-9860GIIの次が出るようです。(^^)
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やす (Krtyski)

Author:やす (Krtyski)
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プログラム電卓は、プログラムを作って、使ってナンボ!

実際に触って気づいたこと、自作プログラム、電卓プログラミングについて書いています。

なお管理人はカシオ計算機の関係者ではなく、Casio Basicが面白いと感じる1ユーザーです。


写真: 「4駆で泥んこ遊び@オックスフォード郊外」

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