fx-9750GIII の概要
更新: 2020/05/31
OS3.40 へのアップデート:2020/10/18
OS3.50 へのアップデート:2021/12/30
2020年4月、北米(アメリカとカナダ)限定で fx-9750GIII が発売されました。
2020年3月にヨーロッパ限定で発売された fx-9860GIII とは色が違うだけで機能はほぼ同じ製品です。
北米とヨーロッパで販売されている fx-9750GII の後継機であり、さらに fx-9860GII の後継機とも言えます。


2020年5月24日現在、Amazon USA での fx-9750GIII の価格は $51.34、一方 Amazon France での fx-9860GIII の価格は €123.77 で、日本への送料がそれぞれ掛かります。fx-9750GIII が半額近く安い設定になっています。 fx-9750GIII は、機能と価格の点で、最も推奨するモノクロ液晶グラフ関数電卓です。2020/05/31 時点で7千円台で入手できます。
▶ ヨーロッパ向けグラフ関数電卓の紹介ページ
- CASIO EUROPE のグラフ関数電卓のページ
- CASIO WORLDWIDW EDUCATION WEBSITE のヨーロッパ向けグラフ関数電卓のページ
▶ 北米 (アメリカとカナダ) 向けグラフ関数電卓の紹介ページ
- CASIO USA のグラフ関数電卓のページ
- CASIO WORLDWIDE EDUCATION WEBSITE の北米向けグラフ関数電卓のページ
▶ CASIO INTERNATIONAL のグラフ関数電卓のページ
現在のところ最も安く入手する方法は Amazon USA からの購入で、この状況は続くと思われます。管理人が購入した時は COVID-19 によるロックダウンの影響でアメリカから日本への配送が止まっていたので、セカイモンで購入しました。購入時に支払った総額は ¥7,651 でしたが、Amazon USA から購入すれば 本体 $51.34 + 国際輸送料 $18.48、為替レートが 1ドル = 108円とすれば、¥7,541、1ドル = 109円としても ¥7,610 となり、セカイモン価格以下になる可能性が高いと思います。為替レートと本体価格は随時変化するので、購入検討時に両者を比較することをお勧めします。
なお、日本国内市場ではモノクロ液晶のグラフ関数電卓 fx-9860GII は既に販売していないので、国内販売の後継機種がどうなるのか気になるところです。
※ fx-9860GII と fx-9860GIII は、モデル名の末尾の I が1つ違うだけなので分かりにくいです。
▶ [2021/12/30 追記] OS3.50へのアップデート
2021/09/08 に欧米では OS2.50 へのアップデートファイルの提供が始まりました。
今回のアップデートで Casio Basic も Pythonモードも 変更が見られません。
fx-9750GIII のアップデートファイルは fx-9860GIII 用と同じものが適用できます。
Download Resources のページ で[ACCEPT]をクリックして fx-9860GIII Series の OS Update for 3.50 アップデートファイルをダウンロードして利用します。但しその後アップデートファイルをダウンロードできるページにアクセスすると、地域を選択するページにリダイレクトされ、ダウンロドページにアクセスできない状況になっています。
現状では以下のページからダウンロードできます;
- OS update for International Baccalaureate® (IB) users
・OS Update ファイル
・Hardware Manual
・Software Manual
▶ [2020/10/18 追記] OS3.40 へのアップデート
2020/10/15 に OS3.40 へのアップデートファイルの提供が始まりました。
Download Resources のページ で [Accept] をクリックして、fx-9860GIII Series の OS Update for 3.40 をクリック、続いて Handledl OS Update をクリックし、*Version 3.40 (for Windows) をクリックして、OSアップデートファイル (zipファイル) をダウンロード。
ダウンロードした zip ファイルを解凍して得られる exe ファイルを実行します。fx-9750GIII の電源を切り、PCと接続しない状態にしておき、画面の指示に従って、電卓とPCをUSBケーブルで接続し、OS更新作業を進めます。
試験モードの追加と Python モードへの casioplot モジュール追加が主な更新ポイントです。
OSアップデートすると fx-9860GIII になるわけではなく、fx-9750GIII にしか無い機能が正しく継承されていることを確認しました。OSアップデートファイルは機種判定を行い、fx-9860GIII、fx-9750GIII、GRAPH35+ E II の3機種で共用しているようです。
アップデートしたソフトウェアマニュアルも同じところからダウンロードできます。
▋はじめに
Casio Basic の機能に着目すると、以下に列挙したモデルが同じカテゴリに含まれます。
- 2006年発売 fx-5800P
- 2007年発売 fx-9860G (OS Ver 2 以降)、生産中止
- 2009年発売 fx-9860GII (国内販売中止)
- 2011年発売 fx-CG10 PRIZM (北米のみ)
- 2012年発売 fx-CG20 (fx-CG10 PRIZM の約1年後)
- 2013年発売 fx-FD10 Pro
- 2017年発売 fx-CG50 (欧米先行、2017/10/20国内発売)
- 2020年発売 fx-9860GIII (ヨーロッパ限定発売)
- 2020年発売 fx-9750GIII (北米限定発売)
fx-9860GIIIと fx-9860GIII / fx-9860GII との比較
fx-9750GIII | fx-9860GIII | fx-9860GII | |
電池 | 単四 x 4 | 単四 x 4 | 単四 x 4 |
電池寿命 (メーカー測定基準) | 230 時間 | 230 時間 | 200 時間 |
サイズ (mm) | 18.7 x 83.5 x 175.5 | 18.7 x 83.5 x 175.5 | 21.2 x 91.5 x 184 |
重さ (g) | 190 | 190 | 225 |
液晶ディスプレイ ・Casio Basic グラフィック ・Casio Basic テキスト ・バックライト | 64 x 128 pixel ・63 x 127 dot ・7 x 21 文字 ・なし | 64 x 128 pixel ・63 x 127 dot ・7 x 21 文字 ・なし | 64 x 128 pixel ・63 x 127 dot ・7 x 21 文字 ・あり |
仮数 + 指数 | 10桁 + 2桁 | 10桁 + 2桁 | 10桁 + 2桁 |
内部演算桁数 | 15桁 | 15桁 | 15桁 |
プログラムメモリ容量 | 最大 ~62 KB | 最大 ~62 KB | 最大 ~62 KB |
メインメモリ (利用可能) | 62 KB ROM | ~62 KB ROM | ~64 KB ROM |
ストレージメモリ | ~3 MB SDRAM | ~3 MB SDRAM | ~1.5 MB SRAM |
プログラムファイル名 | 最大8文字 | 最大8文字 | 最大8文字 |
CPU | SH4A (SH7305) | SH4A (SH7305) | SH4A (SH7305) |
クロック | ~59 MHz | ~59 MHz | ~29 MHz |
- FLL: | 14.75 MHz x900 | 14.75 MHz x900 | 14.75 MHz x900 |
- PLL: | FLLx16, 235.93 MHz | FLLx16, 235.93 MHz | FLLx16, 235.93 MHz |
- IFC: CPUコアクロック | 1/4 PLL, 58.98 MHz | 1/4 PLL, 58.98 MHz | 1/8 PLL, 29.49 MHz |
- SFC: SuperHywayバスクロック | 1/8 PLL, 29.49 MHz | 1/8 PLL, 29.49 MHz | 1/8 PLL, 29.49 MHz |
- BFC: メモリバスクロック | 1/8 PLL, 29.49 MHz | 1/8 PLL, 29.49 MHz | 1/8 PLL, 29.49 MHz |
- PFC: I/Oクロック | 1/16, 14.74 MHz | 1/16, 14.74 MHz | 1/16, 14.75 MHz |
PCリンク | Screen Receiver | Screen Receiver | FA-124 |
OSバージョン | 3.21 | 3.21 | 2.09 |
Casio Basic | あり | あり | あり |
Python | あり | あり | なし |
fx-9750GIII は色以外は fx-9860GIII とほぼ同じだと分かります。
fx-9860GII からの主な変化を列挙します;
▶ CPUクロックは、fx-9860GIII と同様に fx-9860GII の倍になりました。
▶ ストレージメモリは、fx-9860GIII と同様に fx-9860GII の倍になりました。
▶ PCリンクが fx-CGシリーズと同様にUSBマスストレージになり、PCリンクがとても楽です。
▶ fx-9860GIII と同様に Pythonが追加されています。
▶ サイズが小さく、薄くなり、軽くなりました。
以下は、改悪と思われる変化です;
▶ 液晶サイズが小さくなりました。
▶ 液晶画面は、fx-9860GIII と同様に fx-9860GII より視認性が低下、応答性も悪化しました。
※ 個人的には、十分に明るい場所で使う限り液晶画面の視認性は気にならず、黒い筐体は白よりも気に入っています(汚れが芽出しにくい)。液晶の問題を除けば fx-9750GIII は良いモデルだと思います。特に小型・薄型になったことで、1万円未満で国内販売されれば、fx-5800P の代わりに使えるモデルになるかも知れません。
1. 到着したパッケージ
2. 外 観
3. ソフトウェアダウンロード
3.1 OSアップデート
3.2 取扱説明書
3.3 アドインプログラム
3.4 サポートソフトウェア
4. データ転送
4.1 PCとのリンク
4.2. 電卓同士のデータ転送
5. バックアップ
6. ハードウェア
6.1 液晶画面の応答性悪い NEW!
8. Casio Basic の互換性
9. カタログ機能
10. プログラムリスト
11. Casio Bsic の処理速度
11.1 計算主体のプログラム
11.2 動きのあるテキスト出力プログラム
11.3 動きのあるグラフィック出力プログラム
12. さらなる高速化
12.1 オーバークロック
12.2 アドイン版Casio Basic (C.Basic)
TI-84 Plus が想定ライバル機のようです。

パッケージを開けると、fx-9750GIII 本体、英語版 Quick Start Guide、単四アルカリ電池4本 (試供品)、英語版保証書、英語版注意書きが入っています。PCリンク用のUSBケーブル、電卓同士を接続する3Pinケーブル、CDは同梱されていません。
2nd edition
ところで、スタンダート関数電卓 - ESシリーズ 2nd edition - 例えば fx-991ES PLUS 2nd edition (写真右) とデザインがよく似ており、カシオの最新モデルの共通コンセプトのようです。また、このスタンダート関数電卓のサイズと大きく変わらず、小型化が進んでいることが分かると思います。


fx-9750GIII のケース裏側のデザインは、凝った美しい凹凸模様が入っています (fx-9860GIII と同様)。模様の中心にリスタートボタンがあります。ハードカバーは CASIO の刻印が入っているだけのシンプルなデザインになっています。
なお、ケース裏側をよく見ると MADE IN THAILAND とあるので、カシオもいよいよ脱中国に動いているのかも知れません。
日本語取扱説明書はまだ公開されていません。
英語版は、Casio World Education Website の Download Resources のページからダウンロードできます。
- fx-9750GIII のマニュアル
グラフ関数電卓のDownload Resourcesのページで、SOFTWARE LICENSE AGREEMENT に [Accept] クリックすると、OS、マニュアルと各種アドインプログラムをダウンロードできます。アドインの中で、購入した fx-9750GIII にインストールされているのは Geometry のみです。
なお、ここで OS アップデートファイルもダウンロードできますが、購入した製品にインストールされている Ver 3.21 よりも古いものなので、今はダウンロードの意味がありません。
▶ Screen Receiver - 電卓画面をPCで表示するソフト
Screen Receiver はPC画面に電卓の画面を表示するだけでなく、画面イメージを画像ファイルで保存できます。fx-9750GIII の Download Resources のページで、Support Software をクリックし、Screen Receiver がダウンロードできます。バージョンは 3.02 で、fx-9860GIII、fx-CG20 /10 用と同じバージョンで、共通して使えます。
▍PCとのリンク
標準添付の USBケーブルを使います。
USBケーブルで fx-9750GIII と PC を繋ぐと、fx-9750GIII の液晶での表示が接続モード (Connection Mode) になります。
ここで、[F1] (USB Flash :[F1]) を押すと、ポップアップウィンドウで Preparing USB と表示され、少し待つと接続完了です。
後は、エクスプローラで fx-9750GIII がドライブとして表示されるので、PC上と同じ操作でファイルのやりとりができます。

fx-9750GIII 内のフォルダ / ファイル はこのように表示されます。上の画像は、Ftune3 と C.Basic がインストールされた状態のものです。
(参考)
- Ftune3:チューンアップ(オーバークロック)ツール
- C.Basic:アドイン版Casio Basic (上位互換、高速、高機能 Casio Basic)
fx-9750GIII を接続した時のドライブには最初は名前が無いので、FX-9860GIII と名前を付けました。ドライブを右クリックしてプロパティを選び、そこでドライブの名前を入力できます。

アドインプログラムのインストールは、ドライブのルートにアドインファイルをコピーします。リンクを終了するには、Windows PCの通知領域 (タスクトレイ) で「ハードウェアを安全に取り外してメディアを取り出す」で [DEVICE の取り出し] をクリックします。外付け USBハードディスクや USBメモリの取り出しと同じ操作です。
3Pinコネクタの接続ケーブル (SB-62) を使って2つの電卓を繋ぎ、接続する両方の電卓で CABLE (ケーブルの選定) で [F2] (F2:3Pin cable) を設定後、一方で TRANSMIT (送信)、他方で RECV (受信) に設定すれば、データのやりとりができます。
プログラムを含むデータのやりとりができる他のモデルは、fx-9850Gシリーズ、fx-9860Gシリーズ、fx-9860GIIシリーズ、fx-9860GIII、fx-9750GIII、そして fx-CGシリーズで、Menu に Link 項目があって、3Pin コネクタが付いている機種です。なお、fx-5800P との間でのデータ転送はできません。
詳しくは、Sofware Manual に書かれているので確認できますが、使ってみれば分かると思います。
fx-CGシリーズ から fx-9750GIII へ転送すると、ファイル形式は g3m から g1m へ自動変換され、カラーや細線設定など、fx-9750GII で未対応のコマンドは @ に自動的に置き換えられます。
万一に備えて、電卓内部のデータをバックアップしておくことを勧めます。PCに保存フォルダを作り、PCとのリンク機能を使って電卓内のデータをPCの保存フォルダに丸ごとコピーしておきます。

上は、購入時のバックアップです。そして適宜バックアップをすると良いと思います。特にチューンアップツールでオーバークロックを行う場合は、エラー発生時に電卓のリセットが必要になりプログラム、データやプログラムが失われることもあるので、バックアップしてあればこれらを簡単に戻せます。
▍液晶画面の応答性が悪い NEW!
fx-9750GIII や fx-9860GIII のモノクロ液晶の応答性が悪いと感じています。

左から、fx-9750GIII、fx-9860GII、fx-9860G の液晶画面
fx-9750GIII の液晶画面は、少し見づらい感じがしています。せめてバックライトがあれば視認性が向上する筈ですが、何故かバックライトの採用が見送られていて、非常に残念です。
これらのモデルでは、実験の結果から実際に液晶画面の応答性が悪いことが分かりました。
sentaro様が作成された C.Basic for FX で動作するプログラムを走らせると分かります。
※ プログラムのダウンロード:
https://egadget2.web.fc2.com/archives/fx-9860GII/C.Basic/LCD_Test.html
3つのプログラムを同梱しています;
・LCDBALL.g1m
・LCDGRAY.g1m
・LCDSCRL.g1m
▶ LCDBALLの実行結果
ボールが跳ね回るテストプログラム、64fps固定。
グラフィックス描画の見え方の比較です。右が一番古い fx-9860G、中央が fx-9860GII、左が一番新しい fx-9750GIII です。一番左の fx-9750GIII が最も残像が多くボールの移動が長く尾を曳くように見えます。そして一番右の fx-9860G が最も残像が少ないことが分かります。fx-9860GIII も fx-9750GIII とほぼ同様の結果になります。つまりモデルが新しくなるにつれて、液晶の応答性が悪くなっています。プログラムは 64fps で表示していますが、YouTubeにアップした動画は 30fpsなので実際の見え方を正しく再現してません。それでも残像の違いは顕著に分かります。
▶ LCDSCRLの実行結果
文字の見え方の比較です。Youtubeにアップした動画は 30fps なので、実際とはかなり違って見え、縦横スクロールでの文字の見え方の違いはとても顕著です。fx-9750GIII は残像が激しく文字が殆ど認識できない一方、fx-9860G は格段に文字を認識できます。
▶ LCDGRAY
4階調表示をしてみるテストプログラム。128 fps固定です。
YouTubeには 30fps でアップしているので、この画像では動きが殆ど見えません。実際は fx-9860G では動きが見えることから、一番古いモデル fx-9860G の応答性が最も高く、見やすいことが分かります。fx-9750GIII は残像が激しく、実際はちらつくだけに見えます。
撮影に用いたカメラが 30fps までなので、うまく動画をアップできませんでした。これらの古いモデルをお持ちの場合は、是非実際に試して頂きたいと思います。
fx-9750GIII や fx-9860GIII の液晶画面は、過去のモノクロモデルに比べて応答性が悪く、視野角を変えた時のコントラストの変化が大きく少し見づらいのにも関わらず、バックライトが無いという残念な仕様になっています。
fx-9750GIII のハードウェアは fx-9860GIII とほぼ同じで、関数電卓としての機能も同じです。
⇒ fx-9860GIII の関数電卓としての機能 参照
[2020/05/31 追記]
fx-9750GIII には、これまでのグラフ関数電卓にない新しい機能が追加されています。
乗算記号を省略したときの優先度の扱いは、日本とアメリカや他の国では異なって教えられているようです。日本では省略した場合の優先度が高いのですが、アメリカでは省略しても × と同等の優先度だと教えていたようです。例えば、
6÷2(1+2)
は、日本では 6÷(2×(1+2)) = 1、アメリカでは 6÷2×(1+2) = 9 が正しいとされます。
これについては、面白い記事を紹介します ⇒ 関数電卓マニア - 関数電卓コラム 6÷2(1+2)?
この記事によれば、この優先度については、すでに決着がついているとのことです。しかし慣れ親しんだ優先順位は簡単に変えづらいのでしょう。アメリカ仕様の電卓を使うと、期待した計算結果にならないわけです。ならば切り替えられると良いわけです。
これまでの電卓では、乗算機能省略時の優先度はどちらかで決まっており、選択できませんでした。fx-9750GIII で初めてこの仕様を切り替えられるようになりました。
[SHIFT]-[MENU] (SETUP) で現れる設定画面の一番下の項目で、乗算記号省略時に優先度を上げる(On) か上げない(Off) かを設定できます。

工場出荷時は、乗算省略時の優先度を高くする設定(On) になっています。
この設定の時、RUN・MAT モード(関数電卓の計算モード) で、6÷(1+2)を入力して [EXE] を押すと、括弧 ( ) が自動的に追加されて、計算結果が 1 となります。


Imp Multi を off にし、同じ計算をすると、括弧の自動追加は行われずに、結果が 9 になります。


この設定は、Casio Basic プログラムにも反映されます。この新機能に対応して、省略された乗算記号に優先度を On / Off する新たなコマンドも追加されています。
・ImpMultiOn
・ImpMultiOff
但し、現在の設定値を返すコマンドは無いので、例えば以下のようなコードで On か Off かを判定する方法が考えられます。
4÷2(2)-4⇒"ImpMulti On":"ImpMulti Off"
If 4÷2(2)-4
Then "On"
Else "Off"
IfEnd
ちなみに、ヨーロッパ専用の fx-9860GIII は、6÷2(1+2) = 1 となります。他の fx-9860Gシリーズ、fx-CGシリーズ、fx-5800P も計算結果は 1 になります。
※ どちらにも解釈できる式を使わず、括弧 ( ) を使った表記にすれば問題はありません。
fx-9750GIII に搭載されている Casio Basic は、2006年に海外で発売された fx-9860G とそれ以降に発売されたグラフ関数電卓、そして fx-5800P に搭載さているものと同じカテゴリに属します。これらの Casio Basic は、構造化風コーディングができて意外に高機能です。当ブログでは、このカテゴリを新世代 Casio Basic と呼んでいます。
< 新世代Casio Basic搭載機 >
- 2005年発売 fx-9860G (生産中止)
- 2006年発売 fx-5800P
- 2009年発売 fx-9860GII
- 2010年発売 PRIZM fx-CG10 (北米のみ)、fx-CG20と同じ
- 2012年発売 fx-CG20
- 2013年発売 fx-FD10 Pro
- 2017年発売 fx-CG50
- 2020年発売 fx-9860GIII
- 2020年発売 fx-9750GIII
新世代 Casio Basic については、Casio Basic の勧め を参考にしてください。
fx-9750GIII 搭載の Casio Basic は、fx-9860GIII と異なる点が見つからず、さらに fx-9860GII 搭載の Casio Basic とも完全互換と言って良いと思います。
⇒ fx-9860GII への移植 - 厄介な旧来の命令
⇒ Casio Basic 機種間の互換性
当ブログで公開している Casio Basic入門、逆引きCasio Basic、Casio Basicコマンドリファレンス、プログラムライブラリ は、fx-5800P と fx-9860GII の違いを理解しておけば、そのまま fx-9750GIII に適用できます。
[SHIFT] [4] (GATALOG) を押すと、カタログ画面が現れます。
fx-9750GIII OS3.21 と fx-9860GIII OS3.21 では違いが認められません。
⇒ fx-9860GIII のカタログ機能 参照
▋プログラムリスト

fx-9750GIII のプログラムリストは、fx-9860GIII と変わっていません。fx-CGシリーズのように、アルファベットキーを押した時にそのアルファベットで始まるプログラム名にジャンプする機能は無く、fx-9860GII から進化していません。
▋Casio Basic の処理速度
fx-9860G シリーズ用に作成したプログラムが そのまま fx-9750GIII で動作します。そこで、いくつかのプログラムの処理速度を fx-5800P、fx-9860GII、fx-CG50 と比較してみます。fx-9750GIII は g1m ファイルが動作します。
fx-9750GIII のCasio Basic 処理速度は fx-9860GIII とよりも速いという意外な結果が得られました。
PRIME - 素因数分解
※ 使い方やプログラムソースについては、fx-9860GII への移植 - 素因数分解 参照
計算する数値: 7,849,516,203 = 32 x 9811 x 88897
fx-CG50 の画面は以下のようになります。
機種別処理時間の比較
fx-CG50 | fx-9750GIII | fx-9860GIII | fx-9860GII | fx-5800P |
118 MHz | 59 MHz | 59 MHz | 29 MHz | --- |
46秒 | 61秒 | 69秒 | 89秒 | 444秒 |
1 | 1.35 | 1.50 | 1.93 | 9.65 |
0.74 | 1 | 1.11 | 1.44 | 7.16 |
0.67 | 0.90 | 1 | 1.29 | 7.05 |
0.52 | 0.70 | 0.78 | 1 | 8.73 |
fx-9750GIII の計算処理は、fx-9860GIII より 10% 程度速くなっています。
fx-9750GIII と fx-9860GIII で使っていた乾電池を交換しても、fx-9750GIII が速く、同じ結果になったので、速度の違いは電源電圧の盛況ではないことは確認しています。また、メインメモリの空き領域は双方とも 20,000バイト程度なので、メモリの影響も考得られません。上記の積分計算速度は差が無かったので、関数の処理速度に大きな差はありません。
OSバージョンは双方とも 3.21 と同じなので、fx-97500GIII が速い理由がよく分からないのが正直なところです。
PYTHA - ピタゴラス数探索
※ 使い方やプログラムソースについては、fx-9860GII への移植 - ピタゴラス数 を参照。
このプログラムを起動すると1つめのピタゴラス数を表示して一旦停止します 。
[EXE] キーを長押しすると、連続的に次々とピタゴラス数が表示し続けます。
そして、500個のピタゴラス数を探索して表示するまでの時間を計って比較します。
機種別処理時間の比較
fx-CG50 | fx-9750GIII | fx-9860GIII | fx-9860GII | fx-5800P |
87秒 | 56.0秒 | 57.2秒 | 93秒 | 441秒 |
1 | 0.64 | 0.66 | 1.07 | 5.07 |
1.55 | 1 | 1.02 | 1.66 | 7.88 |
1.52 | 0.98 | 1 | 1.63 | 7.71 |
0.94 | 0.60 | 0.62 | 1 | 4.74 |
fx-9750GIII が速い原因がよく分かりません。
MONTECAR - モンテカルロ法による円周率計算
- fx-9860GII用 g1m ファイル
[EXE] キーを押すと、ランダムに点を打ち始め、それが円内にある割合から円周率を求める、モンテカルロシミュレーションプログラムです。このプログラムは、グラフィックスの Textコマンドと Plotコマンドによる表示更新を頻繁に行うものです。そこで、Text と Plot を500回繰り返す時間を、機種別に調べて比較してみました。
fx-CG50 | fx-9750GIII | fx-9860GIII | fx-9860GII |
174秒 | 87.3秒 | 87.5秒 | 135秒 |
1 | 0.50 | 0.50 | 0.78 |
1.99 | 1 | 1.00 | 1.55 |
2.00 | 1.00 | 1 | 1.54 |
1.2 | 0.65 | 0.65 | 1 |
fx-9750GIII は、Casio Basicによる内部演算速度が速く、テキストならびにグラフィックス出力処理速度も少し速いことが分かりました。
プログラムをより高速化するには、現在のところ2つの方法があります。1つはチューンアップ (オーバークロック)ツール による高速化、もう一つはアドイン版 Casio Basic - C.Basic の利用です。
▍チューンアップ
これまで、fx-9860G、fx-9860GII、fx-9860GIII そして fx-CG10 PRIZM / fx-CG20 そして fx-CG50 に対応したオーバークロックツールが、sentaro様により提供されています。いずれも比較的安全性が確保されており、私も愛用しています。但しオーバークロックは、最悪ROM に記録されている内容が損傷をうけて電卓が起動できなくなってもメーカー保証を受けられないので、自己責任で利用しましょう。
fx-9750GIII と fx-9860GIII には、Ftune3 が提供されています。
⇒ Casio グラフ関数電卓を限界までチューンアップ
当ブログでは、作者の sentaro様から直接サポートを受けられるように、以下の以下のエントリーを用意していて、そこでは Ftune3 のダウンロードと質問ができます。
⇒ グラフ関数電卓のオーバークロック - Ftune / Ptune -
安全に使う第一歩は、デフォルトの[F5]での設定を使うことです。
▍アドイン版 Casio Basic (C.Basic)
C.Basic は、fx-9750GIII や fx-9860GIII に加えて fx-9860Gシリーズ、そして fx-CGシリーズに対応しています。開発者はチューンアップツールと同じ sentaro様です。
C.Basic は、純正Casio Basic のソースをほぼそのまま実行可能で、特にグラフィック描画の高速化は目を見張るものがあります。
どのくらい速いかは、ここ にある動画を見れば一目瞭然です。開発開始以来、現在でも国内外のユーザーの要望に応えつつ、デバッグや機能追加によるバージョンアップが継続しています。
fx-9860G シリーズ用の C.Basic for FX と fx-CGシリーズ用の C.Basic for CG が公開されており、fx-9750GIII には C.Basic for FX が対応しています。
⇒ C.Basic のトップページ
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