fx-JP900CW の概要
2023/09/23
追記 2023/09/24
追記 2023/09/27
追記 2023/09/30
全体的に追記修正 2023/10/09
追記 2023/09/24
追記 2023/09/27
追記 2023/09/30
全体的に追記修正 2023/10/09
Casio fx-JP900CW
日本語モデル fx-JP900 が発売されてから7年半後に fx-JP900CW (日本語モデル) が発売された。海外では fx-991CW として既に販売されているモデルの日本語版だ。Amazon にて¥6,500で事前予約し 発売日である 9月21日に自宅に届いた。
fx-JP900CW については、以下のページで紹介されている;
- https://www.casio.co.jp/release/2023/0824-classwiz/
- https://www.casio.com/jp/scientific-calculators/classwiz/features/
これらのページでは、分かりやすいUIにより直感的な操作を可能にしたとのことで、
「関数電卓は初めて使う人には操作が難しい」、「現行製品は、関数電卓独自の仕様により直感的に操作が理解しづらい」といった声に応えた結果が今回の新製品だとしている。

日本語モデル fx-JP900 が発売されてから7年半後に fx-JP900CW (日本語モデル) が発売された。海外では fx-991CW として既に販売されているモデルの日本語版だ。Amazon にて¥6,500で事前予約し 発売日である 9月21日に自宅に届いた。
fx-JP900CW については、以下のページで紹介されている;
- https://www.casio.co.jp/release/2023/0824-classwiz/
- https://www.casio.com/jp/scientific-calculators/classwiz/features/
これらのページでは、分かりやすいUIにより直感的な操作を可能にしたとのことで、
「関数電卓は初めて使う人には操作が難しい」、「現行製品は、関数電卓独自の仕様により直感的に操作が理解しづらい」といった声に応えた結果が今回の新製品だとしている。


fx-JP900CW fx-JP900
2023年9月発売(日本) 2015年1月発売(日本)
今回は、主に fx-JP900CW の デザイン、操作性、計算能力 について、fx-JP900 や他の関数電卓と比較し、管理人独自の見解を紹介する。
2023年9月発売(日本) 2015年1月発売(日本)
今回は、主に fx-JP900CW の デザイン、操作性、計算能力 について、fx-JP900 や他の関数電卓と比較し、管理人独自の見解を紹介する。
[2023/09/27 追記]
関数電卓は、豊富な機能を限られたハードウェアキーとソフトウェアメニューにどのように振り分けるかが、UIや操作性に大きく影響する。各メーカーは自社製品のユーザーの利便性を損なわないために、機能追加に際しても大きなUI変更は行ってきていない。ところが、fx-JP900CW は、過去の流れと比較すると大きなUI変更により、操作性の変化も比較的大きいものになっている。
実際にキーの数を6個減らし、1つのキーにそれまで3つの機能を割り当てていたのを2つに減らしており、それでありながら直感的な分かりやすい操作性を確保するといった、過去に無い課題に取り組んだのが fx-JP900CW のUIだ。キー割り当てから外れた機能はソフトウェアメニューに割り振るので、メニューの使い方も大幅に変更されている。
管理人は歴代のカシオ関数電卓を愛用してきており、さらに限られた目的の計算を過去の機種の操作法に基づいてヘビーユーザーの立場から評価したところ、操作性の改悪が目に付いた。
一方、ヘビーユーザーといっても全機能を使いこなしているとは限らず、機能によっては初心者になる。そこで、普段あまり使わない機能を使ってみたり、新しい機能の物理キーの意外な使い勝手を発見したりすることで (取扱説明書を読まず直感的に使っている)、初心者ユーザーの視点に立ち返ることになる。
本記事の結論としては、
1. デザインは確実に改善された
2. カシオは強調していないが、基本的な計算能力が高くなった
3. 各機能の操作性がヘビーユーザーと初心者から等距離になるような設計思想で、
ヘビーユーザーの利便性を犠牲にして初心者が使いやすくなった
と言える。
ヘビーユーザーの視点による否定的な評価に加えて、少し使いこなしてからの初心者視点での評価も具体的に紹介する。
シンプルな紙の箱に、電卓本体と折りたたんだ1枚の紙だけが入っている。カシオが SDGs を考慮したことによるのだそうだ。
冊子の状態での紙の取扱説明書は提供されていない。ネット上の取扱説明書 のURLを示すQRコードが電卓で表示できるので、それを利用してWeb上の取扱説明書を使う。
[2023/09/24 追記]
カシオのマイページで製品登録を行った後、マイコレクションに登録された fx-JP900CW を検索すると取扱説明書のPDF版をダウンロードできる。またカシオの製品サポート - fx-JP900CW のページからPDFの取扱説明書をダウンロードでき、HTMLを参照できる (これはQRコードから参照できるものと同じ)。
⇒ fx-JP900CW の製品サポートページ
▋デザイン
▍キー

キーは全て丸い形状で、"黒に刻印" のタイプと "灰色に白色印刷" のタイプがある、SHIFTキーだけが "金色に刻印" タイプになっている。キーの押し心地は良く、軽く速く叩いても確実に入力されるという感覚を持った。キーの操作性は改善されている。
fx-JP900 やそれまでの "関数電卓" のキーは四角いのが通常で、丸いキーは電源やモード変換/選択などの一部に適用されていた。演算記号やアルファベット3文字~数文字の記号などをキートップに印刷するなら横長の四角いキーが都合がよさそうで、そういうものだと納得していた。(一般のデザイン電卓では丸形キーはかなり以前からあった)。
数学自然入力機能の実装が進むにつれて、演算や機能をピクトグラムのような絵で表記するようになったことが、丸いキーでもピクトグラムのような絵なら収まりが良いという感覚なのだと思う。
冊子の状態での紙の取扱説明書は提供されていない。ネット上の取扱説明書 のURLを示すQRコードが電卓で表示できるので、それを利用してWeb上の取扱説明書を使う。
[2023/09/24 追記]
カシオのマイページで製品登録を行った後、マイコレクションに登録された fx-JP900CW を検索すると取扱説明書のPDF版をダウンロードできる。またカシオの製品サポート - fx-JP900CW のページからPDFの取扱説明書をダウンロードでき、HTMLを参照できる (これはQRコードから参照できるものと同じ)。
⇒ fx-JP900CW の製品サポートページ
▋デザイン
▍キー


キーは全て丸い形状で、"黒に刻印" のタイプと "灰色に白色印刷" のタイプがある、SHIFTキーだけが "金色に刻印" タイプになっている。キーの押し心地は良く、軽く速く叩いても確実に入力されるという感覚を持った。キーの操作性は改善されている。
fx-JP900 やそれまでの "関数電卓" のキーは四角いのが通常で、丸いキーは電源やモード変換/選択などの一部に適用されていた。演算記号やアルファベット3文字~数文字の記号などをキートップに印刷するなら横長の四角いキーが都合がよさそうで、そういうものだと納得していた。(一般のデザイン電卓では丸形キーはかなり以前からあった)。
数学自然入力機能の実装が進むにつれて、演算や機能をピクトグラムのような絵で表記するようになったことが、丸いキーでもピクトグラムのような絵なら収まりが良いという感覚なのだと思う。
なお、デジタルデバイスで多様されるようになったメニューアイコンや消去アイコンをキートップに採用したのは面白い試みだと思う。
▍キー周りの天板印刷
fx-JP900 ではキー周りの天板表面に細かい凹凸処理がなされており、細かい光の反射で天板上の印刷が見づらいという問題があったが、fx-JP900CW ではこの問題が解消され非常に見やすく改善されている。
▍液晶表示

fx-JP900CW のメニュー画面
液晶はとても見やすく改善された。これまでの電卓のモノクロ液晶は1階調であったのに対して、今回の4階調モノクロ液晶採用による視認性の向上はとても効果的だ。
▍フォント変更

fx-JP900CW (左) のディスプレイフォントは fx-JP900 (右) よりも見やすくなった。
全体的に視認性が大幅に改善されており、老眼が始まる中高年以上にも評価が高い変更だと思われる。
▍カバーや側面の凹凸デザイン


カバーの表面には細かい凹凸があって滑りにくくなっている。また上下逆にしても使える。カバーの裏側には CASIO ロゴの刻印状のマーキングがある。表でなく裏にロゴがあるのは、個人的に好みだ。
これまでの関数電卓のスライド式のカバーと違って、fx-JP900CW のクリップ式カバーは表につけても裏につけても分厚くならない。持ち歩くときも計算する時も薄さを保てるのは非常に良いデザインだ。
電卓本体の側面(厚み)にも細かい凹凸があり、滑りにくくなっている。カバーとは異なる凹凸パターンがデザインされており、製品デザインとして高品質な印象を与える。違法コピー品対策にもなっていると思われる。
電卓の裏にカバーを取り付けて側面からみると、艶消し黒で統一的にデザインされたようにみえ、実用性と高級感にの両方が得られる。

これまで関数電卓を使い続けているが、うっかりと取り落とすことが何度もあった。側面の細かい凹凸は良い滑り止めになる。側面とカバー表面の細かい凹凸のある黒いデザインは、指紋や汚れが定着しにくい効果もある。
fx-JP900 の白くて平滑な表面のプラスチック筐体とカバーは、汚れが目立ち、経年劣化や落下痕そして傷が確実に気になってしまう (fx-JP900 の記事でもその点にも触れていた)。それに対して、fx-JP900CW (fx-991CW) は、汚れや経年劣化そして傷が目立たないデザインであり、長年愛用するに耐える優れた改善だと思う。
▋操作性
▍[戻る], [OK], [x], [Page Up] / [Page Down], [HOME] キーの利便性
戻るキーの追加 と カーソルキーの中央にOKキーを追加 この2点は、操作性の大きな向上だ。とても使いやすくなった。
fx-JP900CW を実際に使い、両手を使って式を入力する際、x キーは左側にある方が入力が楽だと気づいた (fx-JP900 は xキーが右にある)。地味だが良い改善だと感じた。
▍HOME メニューの操作性

fx-JP900CW のメニュー画面
上の図のように "確率分布" 選択状態から "基本計算" を選ぶには、左矢印キーを2回押して "基本計算" まで選択を移動させる必要がある。選択を変えるために、矢印キーを何回も押し続ける方法しか提供されていない。
一方で、fx-JP900 のメニュー (下記) では、選択したい項目の番号を押すだけで、そこへ移動できる。

[1] キーを1回押すだけで "基本計算" を選択可能だ。このメニュー選択動作は、グラフ関数電卓のメニューでも適用されており、メニュー番号を覚えていて頻繁に使う機能なら、キーを1回押すだけでメニュー選択ができてとても便利だ。
[2023/09/27 追記]
[HOME]キーを続けて2回押すと "基本計算" に戻ることが見つかった。さらに Page Up / Page Down キー (縦長のキー) を使うと、次ページや前ページへのジャンプ、あるいは同じページの先頭項目や最後の項目へのジャンプができる。これらを組み合わせると比較的少なめのキー操作で目的の機能にアクセスできることに気づいた。ヘビーユーザーがキーを1回叩くだけよりは手間はかかるが、あまり使い慣れていない人 (初心者) にはジャンプ機能は分かりやすく、低ストレスで使えると思う。ヘビーユーザーと初心者から等距離にある操作性としてはよく考えられていると思う。
▍関数計算 (物理キー と ソフトウェアメニュー)
管理人の場合、関数電卓の入力(自然数学入力) で最もよく使うのは、分数、指数 (ex と xy) と対数、√、x2、x-1 そして 自然数学表示と小数の切り替えだ。これを前提として関数計算の操作性について評価する。


fx-JP900CW のキー fx-JP900 のキー
fx-JP900 の関数キーが22個で、fx-JP900CW の関数キーは16個になり、6個減っている。
さらに、fx-JP900 ではキー1つに [SHIFT]+[key] と [ALPHA]+[key] の2つの機能が追加されているが、fx-JP900CW では、追加機能は [SHIFT]+[key] のみに減らされている。さらに、物理キーの機能から外されたものは、[CATALOG]、[TOOLS]、[FORMAT] の3つのキーで表示される状況依存のメニューリストに効果的に割り振っている。キー配置だけでなくメニュー項目の配置も以前から大きく変わっている。
キーの数を減らし、さらに1つのキーに割り当てる機能を2つに減らしながら、直感的な操作性を確保する! カシオがこの課題に取り組んだ結果が fx-JP900CW だ。ヘビーユーザーの要求と初心者が必要とするものには隔たりがあるが、敢えてこれらから等距離なところに解を求めたように思われる。
▶ 小数表示と数学自然表示の切り替え (操作性の悪化)
fx-JP900 や他の電卓には [S⇔D] キーのように、小数表示と数学自然表示の切り替えを1アクションで可能になっている。ところが fx-JP900CW ではこのキーが消滅している。その代わり、[FORMAT] ⇒ [下矢印] (小数表示) ⇒ [=] と3アクション必要だ。最悪の操作性だ!
▶ 関数入力の操作性
関数電卓を使う際、最も多く使う関数は、三角関数、指数と対数だ。さらに x-1 と x2 も頻繁に使うのでシングルアクションで使えるキーがあると助かる。
fx-JP900CW | fx-JP900 | |
仮分数: | 1アクション | 1アクション |
帯分数: | 2アクション | 2アクション |
--- | ||
平方根: | 1アクション | 1アクション |
累乗根: | 2アクション | 2アクション |
--- | ||
log (常用対数): | 1アクション | 1アクション |
ln (自然対数): | 2アクション | 1アクション |
--- | ||
ex: | 3アクション | 2アクション |
10x: | 3アクション | 2アクション |
x-1: | 2アクション | 1アクション |
x2: | 1アクション | 1アクション |
■□ (累乗) | 1アクション | 1アクション |
--- | ||
三角関数: | 1アクション | 1アクション |
逆三角関数: | 2アクション | 2アクション |
・ex を計算するには、[ex] キーが無いので、[SHIFT]+[8] (e) ⇒ [■□] (累乗) ⇒ x の値入力 と3アクション以上必要だ。
・10x を計算するには、[10x] キーが無い。[1] ⇒ [0] ⇒ [■□] ⇒ x の値入力と3アクション以上必要だ。
・in x (自然対数)は、[SHIFT] + [log] ⇒ x の値入力と2アクション以上必要だ。
このように、fx-JP900CW での指数や対数計算では明らかに入力の手間が2~3アクション以上増えている (fx-JP900 対比)。理工系の学生や技術者の利便性を犠牲にして初心者を大切にした設計方針だと分かる。
▶ 不可解な裏機能
また fx-JP900CW での [SHIFT] + [key] で入力する裏機能は以下のようになっている。
[key] (表機能) | [SHIFT]+[key] (裏機能) | コメント |
log (常用対数) | ln (自然対数) | logの裏機能は 逆関数の10x が良のではないか? 逆関数を考えると ln は ex の裏機能であるべきだが、そもそも ex が関数キーにない。 |
□2 (x2) | logab | □2 (x2) の裏機能は 逆関数の平方根がわかりやすいと思う。 logab の扱いはカシオも以前から悩んでいるようだが、累乗 (■□) の裏に log■□ (logab) を持ってきて、使用頻度の高い x2 の裏に x-1 をもってくると分かりやすいかも知れない。 |
■□ (xy) | x-1 | ■□ (xy) の裏機能は x-1 では無いと思う。 使用頻度が高い x2 の裏機能を敢えて仕様頻度の高い x-1 にした方が良いかも知れない。 |
今回のUI変更は、キーの数を減らすことを主眼にして、あとは逆関数などに拘るとキーが足りないから、指数への導線は [■□](累乗)キー1つ、対数は log と 裏の ln への導線は [log] キー1つに押し込んだわけだ。そして、よく使う関数は √■ (平方根)、■□ (累乗)、■2 (2乗)、log となっていて、[SHIFT]キーのあとに押す裏関数として ■√□ (累乗根)、□-1 (x-1)、log■□ (logab)、ln (自然対数) と、よく分からない基準で押し込んだ、といった印象を持つ。
直感的な操作を可能にしたUIとのことだが、カシオ関数電卓のヘビーユーザーにとっては、直感では分かりにくUIになっている。
[2023/09/27 追記]
高い頻度で使う機能は、全てキーを押すだけで使える (ソフトウェアメニューは殆ど使わない) ので、キーの場所に慣れればストレスは減ると思われる。但し、fx-JP900CW をしばらく使い続けないと、元の感覚に戻ってしまいそうだ。
ex の入力については、[SHIFT]+[8] (e) と入力後、[■□] キーを押して指数部分を入力することになるが、[SHIFT]+[8] (e) の [8] キーがテンキーの一番上、関数キーのすぐ下にあることから、指の移動距離が少なく入力しやすい。よく使う π、e、i がテンキーの一番上の行の裏になっているのがUI変更の良い点だ。以前のモデルでは π と e はテンキーの一番下のキーの裏であったから、その対比で便利さを感じる。
繰り返し強調したいのは、自然数学表示と小数表示の切り替えが [S⇔D] キー1回押しで実現していたものが、キーを3回押さないと切り替えができないのは困ったものだ。これは代替え手段が見つかっていないので、改悪でしかない。
▍[x10■] キーは取り扱い注意!
理工学系の定数は、関数電卓でもよく使う。
例えばアボガドロ数:NA = 6.02x1023 を使ってみる。
これまでの関数電卓で NA を入力するには [x10] キーや [EXP] キーを使って、
・[6] [.] [0] [2] [x10] [2] [3]
・[6] [.] [0[ [2] [Exp] [2] [3]
と入力する。
そして例えば、NA ÷ NA を計算すると、当然 1 となる。
では、fx-JP900CW で [x10■] キーを使って NA ÷ NA を計算してみる。
簡単にするため、6x1023 ÷ 6x1023 と入力して計算、具体的には
[6] [x10■] [2] [3] [÷] [6] [x10■] [2] [3] [=]
と入力してみる。
驚くべき出力が得られた。1 ではなく 1x1046 となる。
これまでの関数電卓と同様に 6x1023 の x を優先して仮数と指数を1つのまとまった数として扱って (6x1023) ÷ (6x1023) と計算してくれることを期待しているのに、そうなっていない。従って、このように仮数から指数までに ( ) を必ず明示的に付加する必要がある。
大丈夫かカシオ!?
[x10■] は [x] [10] [■□] と全く同じなのた。( ) を忘れずに入力するか、以前の関数電卓を使うかの二択が迫られる。
▋計算性能
▶分数表示と演算精度
235÷658 を計算すると 5/14 と表示される。fx-JP900 は ESシリーズの関数電卓のように [S↔D] キーが無い。代わりに [FORMAT] - "小数表示" - [=] の3アクションで 0.3571428571 と小数表示される。計算精度 10 桁となり、fx-JP900 や ESシリーズ関数電卓と同じ結果になった。
▶桁落ち - 改善!!
123456789123456 - 123456789123411 を計算して桁落ち処理を調べる。fx-JP900 や ESシリーズ関数電卓、グラフ関数電卓では、本来 45 となるべきところ 0 となり、残り2桁で桁落ちが発生する。これはカシオ特有の問題である。
ところが、fx-JP900CW では15桁の同じ計算では、桁落ちが発生しない。
取扱説明書によれば、fx-JP900 の内部計算桁数は15桁であるが、fx-JP900CW では23桁に改善されており、これの効果が出ていると考えられる。
試しに、20桁で以下の差を計算させると、
12345678901234567890 - 12345678901234567880 = 10 と正解が得られ、桁落ちは回避。
次に、同じ20桁で以下の差をみると、
12345678901234567890 - 12345678901234567881 = 9 となるべきところ、桁落ちが発生して 0 と出力された。
最後の2桁で桁落ちが発生するのは変わらないが、内部計算桁数が増えたことで20桁までは桁落ちが発生しにくくなった。
地味で細かいところで着実に改善されている!
▶内部演算精度 - 改善!!
radモードで tan(π/2) = -∞ となるところ、近似的に tan(355/226) として、tan( の内部実装精度、および内部演算精度を調べる。
※ tan(355/226) = -7,497,258.18532558711290507183
モデル | 出力 | 備考 |
・fx-JP900CW | : -7497258.185 | 10桁全て正しい値 |
・fx-JP900 | : -7497258.44 | 7桁正しく最後の2桁は誤り |
▶ sin の定義域付近での計算精度 - 改善!!
※ sin(1x108) = 0.9316390271097260
モデル | 出力 | 備考 |
・fx-JP900CW | :0.9316390271 | 小数以下10桁まで全桁が正しい |
・fx-JP900 | :0.9316391026 | 小数以下6桁まで正しい |
▶ べき乗とルート計算
(-32)^(3/5) を計算してみる。
・fx-JP900CW | : -8 |
・fx-375ES A | : -8 |
・fx-991ES PLUS 2nd edition | : -8 |
・fx-115ES PLUS 2nd edition | : -8 |
・fx-JP900 | : -8 |
・fx-5800P | : -8 |
・fx-9750GIII | : -8 |
・fx-CG50 | : -8 |
fx-JP900CW は、fx-JP900 や ESシリーズなどと同様に、いずれも実数値 -8 を表示した。カシオの関数電卓では、ESシリーズで初めてこの計算の実数値を計算できるようになっている (1つ前のMSシリーズではエラーになる)。
参考までに、プログラム関数電卓 fx-5800P、グラフ関数電卓 fx-9750GIII、fx-CG50 の結果も併記した。いずれも同じ結果になる。
但し、(-32)^(3/5) は、実数値 -8 以外に4つの複素数値を持つが、それらは全く出力されない。
CASIOのモデルだけでなく、世界の主要電卓でも正しく5つの値を計算して出力するものが見つかっていない。
⇒ 温故知新:番外編 - 電卓評価用の複素数を解いてみた
▶積分計算 - 高速化!!
時間のかかる積分計算として、以下を調べる。

※ 積分の詳細はこちら
この積分は、radモードでも degモードでも同じ結果になるが、ここでは計算を rad モードで行う。
モデル | 結果出力 | 処理時間 |
fx-JP900CW | 3.141592654 | 63.8 秒 |
fx-JP900 | π | 83.7 秒 |
fx-115ES PLUS 2nd edition | π | 394.1 秒 |
fx-991ES A | π | 395.1 秒 |
fx-991ES PLUS 2nd edition | π | 400.6 秒 |
fx-993ES | π | 411.8 秒 |
fx-995ES | π | 427.3 秒 |
fx-5800P | π | 173.3 秒 |
fx-9750GIII (OS3.40) | π | 14.5 秒 |
fx-CG50 (OS3.50) | π | 9.2 秒 |
fx-JP900CW は fx-JP900 よりも大幅に高速化されていて、スタンダード関数電卓の中では最速である。ESシリーズよりも大幅な高速化が図られている。但し、数学自然表示で入出力するように設定しているにもかかわらず、結果出力はπとならず小数表示になる。
▶ 周期関数の積分 [2023/09/24 追記]
積分計算にガウス・クロンロッド法が使われていることから、このアルゴリズムが苦手な多項式で表せない関数の代表選手として周期関数の積分を行って、タイムアウトする限界を比較してみます (Rad モード)。

機種 | 計算できる n | タイムアウトする n |
fx-JP900CW | n ≦ 12, n = 16, 32, 64, 128, 256 | n ≧ 17 (n ≠ 2m, 4≦m≦8) |
fx-JP900 | n ≦ 8 | n ≧ 9 |
fx-5800P | n ≦ 8 | n ≧ 9 |
fx-9860GII | n ≦ 60, n = 64, 128, 256, 512 | n ≧ 61 (n ≠ 2m, 6 ≦m≦9) |
fx-CG20 | n ≦ 60, n = 64, 128, 256, 512 | n ≧ 61 (n ≠ 2m, 6≦m≦9) |
fx-CG50 | n ≦ 60, n = 64, 128, 256, 512 | n ≧ 61 (n ≠ 2m, 6≦m≦9) |
※ 積分の詳細はこちら
fx-JP900CW は、fx-JP900 に比べて周期関数の積分でタイムアウトしないで積分できる区間が大幅に広いことがわかった。内部計算桁数の増加が寄与していると思われる。グラフ関数電卓での結果のパターンとの類似性から、アルゴリズムの改善・変更があるかも知れない。
▶ 素因数分解 - 僅かに高速化!! [2023/09/24 追記]
fx-JP900CW の内蔵機能の素因数分解を試す。その仕様は fx-JP900 から変わっていない。
fx-JP900CW の演算速度は fx-JP900 よりも早くなっていることが確認できた。
これら新旧の2つの電卓を並べて置き、3,620,951,847 (= 32 × 19 × 23 × 409 × 2251) の素因数分解を同時に開始させると、何度やっても確実に fx-JP9000CW が僅かに早く計算が終了する (再現性100%)。
▶ ClassPad.net [2023/09/24 追記]
ClassPad.net に CASIO ID アカウントでログインして、数学 - ClassPad Math にアクセスする。
fx-JP900CW を電卓のモデルとして選んで上記の各種計算テストを実施すると、同じ出力結果になり、時間のかかる計算も同じような時間で結果を出力するのが面白い。
▶ 表計算だけがメモリ保存される [2023/09/27 追記]
プログラム関数電卓やグラフ関数電卓は、一旦電源を切ったり他のモードを使っても、計算履歴や結果がメモリ保存される。一方これまでのスタンダード関数電卓はこれらの計算履歴がクリアされた。
fx-JP900CW では、表計算だけがメモリ保存されることが分かった。他はクリアされる。
▋まとめ
fx-JP900CW は、fx-JP900 に比べて周期関数の積分でタイムアウトしないで積分できる区間が大幅に広いことがわかった。内部計算桁数の増加が寄与していると思われる。グラフ関数電卓での結果のパターンとの類似性から、アルゴリズムの改善・変更があるかも知れない。
▶ 素因数分解 - 僅かに高速化!! [2023/09/24 追記]
fx-JP900CW の内蔵機能の素因数分解を試す。その仕様は fx-JP900 から変わっていない。
fx-JP900CW の演算速度は fx-JP900 よりも早くなっていることが確認できた。
これら新旧の2つの電卓を並べて置き、3,620,951,847 (= 32 × 19 × 23 × 409 × 2251) の素因数分解を同時に開始させると、何度やっても確実に fx-JP9000CW が僅かに早く計算が終了する (再現性100%)。
▶ ClassPad.net [2023/09/24 追記]
ClassPad.net に CASIO ID アカウントでログインして、数学 - ClassPad Math にアクセスする。
fx-JP900CW を電卓のモデルとして選んで上記の各種計算テストを実施すると、同じ出力結果になり、時間のかかる計算も同じような時間で結果を出力するのが面白い。
▶ 表計算だけがメモリ保存される [2023/09/27 追記]
プログラム関数電卓やグラフ関数電卓は、一旦電源を切ったり他のモードを使っても、計算履歴や結果がメモリ保存される。一方これまでのスタンダード関数電卓はこれらの計算履歴がクリアされた。
fx-JP900CW では、表計算だけがメモリ保存されることが分かった。他はクリアされる。
▋まとめ
fx-JP900CW は関数電卓として、計算機能の改善と高速化が確実に図られている。ESシリーズ以来の基本性性能のアップデートなので、今後関数電卓の標準性能となってゆくと思われる。
デザイン面も確実に良くなっていて、長く愛用したいと思わせるものだ。
なお、ソフトウェアメニューに割り振られた機能は、[CATAOG]、[TOOLS]、[FORMAT] のいずれかの表示される (状況依存)ソフトウェアメニューのどこかの階層にある。そしてメニューは日本語表示になっている。つまり、初心者にはメニューを日本語でたどれば、必ず探している機能が見つかる。初心者には分かりやすいUIになった。
さらに、キーボードの色使いや4階調の液晶採用、そして見やすいフォントの採用は、視認性の向上に大いに寄与している。視認性の向上と日本語メニューは、老眼が始まる中高年には有り難い設計変更のようだ。中高年の消費行動にどこまで影響するかをカシオは考えたのだろうか (その可能性はある)?
一方で、このようなUIの変更は、管理人のような理工系計算のヘビーユーザーには、操作手順が大幅に増え、使いづらくなった。物理キーが6個減らされ、さらに1つのキーあたりの機能を最大2まで減らされた結果、収まらなかった機能がソフトウェアメニューに押し込まれた。これがヘビーユーザーにはUIの改悪という結果になった。
特に、出力された数学自然表示と小数表示を切り替えるキーが廃止されたことは、日常的な計算には利便性を大きく犠牲にした改悪だ。
[x10■] キーの仕様変更、つまり x10■ の "x" が優先されなくなった点は管理人には致命的だ。(6.02x1023) といったように必ず () を付けなければ正しい計算ができないというのは、技術計算を多用する人には納得ゆかないだろう。
理工系の大学以上の学生や技術者の利便性を犠牲にした今回の仕様変更が市場に受け入れられるかどうはは、今後の販売実績や、製品寿命の長さで分かると思う。少なくとも数年間は注視したいと思う。併せて fx-JPxxx シリーズの併売を継続して頂きたいものだ。
管理人は fx-JP900CW を普段使いにはせず、fx-JP500 を引き続き利用する。
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